アートとデザインの違い、Webの現場でどう活かす?
- 2025-07-28

こんにちは。スタートレ制作部、デザイナーのAです。
今回は、アートとデザインの違いについて、そしてそれをWebデザインの現場で活かしているかについて、私自身の経験をもとにお話ししたいと思います。
私は幼い頃から芸術に関わって育ってきました。絵画教室に通い、芸術大学に進学。その後、美容部員、パッケージデザイナー、フリーランスを経て、現在はこのスタートレで、Webデザイナーとして働いています。
アナログもデジタルも、グラフィックもWebも経験してきたからこそ見える視点で、アートとデザインの違い、そしてその両方をどうバランスよく取り入れているかをまとめてみました。
①アートとデザインの定義の違い
これはあくまで個人的な考えですが、アートとデザインは以下のように区別しています。
- アート:自己表現のためのもの。フィジカルに制作し、「伝えたい」気持ちはあるけれど、受け取り方は人それぞれ。好き嫌いで判断されるもの。
- デザイン:目的があり、その達成のために問題を解決する手段。ロジカルに組み立てていく、商業的なもの。エンドユーザーがいて、良し悪しで評価されるもの。
アートは「表現」であり、デザインは「伝達」。
アートが“自分のため”なら、デザインは“誰かのため”に存在すると考えています。
②Webデザイナーの現場で感じる“アート”の活かしどころ
■ 空間構成の感覚
Webサイトのレイアウトを考えるとき、まず紙に手で描くことが多いです。ロゴのラフスケッチも同様です。
こういった「まずは手を動かして構成する」感覚は、絵画やアナログ制作の経験があってこそのものだなと思います。
バランス感や余白の取り方も、感覚的に掴めるようになっている気がします。
■ 色や形の“感覚的な”判断
Webでは視認性やトーン&マナー、配色パターンなどが重視されますが、そこに「差し色で空気感を変える」「あえて変形パーツを使って世界観を強調する」といった感覚を加えることで、より惹きのあるデザインになります。
もちろん構築が複雑になったり、コーディング難易度が上がることもありますが、「ちょっと違和感があるけど印象に残る」デザインは、まさにアート的発想から生まれることも多いです。
■ クライアントの想いを“形”にする力
芸大時代、毎週のように「講評」で問い詰められたのが、「なぜこれを作ったのか?」「何を伝えたいのか?」という意図でした。
そういった訓練のおかげで、クライアントが持つ想いや目的をヒアリングした上で、「こういう理由でこのデザインにした」という筋の通った提案ができるようになったと感じています。
③Webデザイナーの現場で苦労した“アート”の弊害
■ コーディング前提での設計が難しい
最初は、見た目のインパクトや思いの強さで作ってしまいがちでした。だけどWebデザインは“可変する”のが当たり前です。
静的な作品を作ってきた自分からすると、「なぜ平面なのに、なぜ動画でないのに動くんだ…」と思ったこともあります(笑)。
今でこそ理解していますが、「作品」としての設計は通用しません。構築・運用・UIすべてが前提にある世界です。
■ デジタルでの“色の出し方”のギャップ
絵画は絵の具を重ねて深みを出すし、メイクは顔色を明るく見せるために色を足す、パッケージデザインは印刷でしっかり色を出すことが基本。
だから最初はWebでも「しっかり色を見せよう」として、結果ちらつくデザインになってしまったことがありました。
Webは「淡く」「引き算する」「透過する」ことで雰囲気を作っていくということを知って、感覚を調整するのにかなり苦労しました。
④どうやって“さじ加減”を取っているか
私が意識しているのは、「作品」ではなく「提案」として見せることです。
世界観やビジュアルは大切ですが、Webデザインでは“伝わる”ものでなければ意味がありません。
具体的には:
- ロゴやイラストも「動き」「見せ方」込みで提案
- 手描きの要素は、Webに馴染ませるためにモーションやレイアウトで調整
- 自分の“やりたい表現”ではなく、“伝えるべきこと”を軸に絞り込む
その結果、アートの感覚をベースにしながらも、ちゃんと機能するデザインが作れるようになってきたと感じています。
⑤まとめ
アートとデザインは、まったく別物のようでいて、どちらも「人の心を動かす」ことを目的としている点では共通しています。
どちらの要素をどれくらい取り入れるか、その“さじ加減”こそが、作り手の個性であり、武器になります。
私はこれからも、自分のルーツであるアートの感覚を活かしつつ、ロジックやユーザー視点をしっかり持って、「伝わる+惹かれる」デザインを作っていきたいと思っています。